Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

    “夏日がやってきた”
 


昨日は暖かかったんだけどもねと、
なかなか安定しないで
不意打ちみたいにコートレベルの上着がいるよな
随分な“寒の戻り”に襲われたのって、
それほど前の話じゃないと思うんだけど。

 『だよなぁ。
  毎年“クールビズが始まりました”ってニュースを、
  こんな寒い日に始まるなんて可哀想だねって
  言ってたような気がするし。』

 『あら、それって
  六月の“衣替え”じゃなかったですか?』

ウチのパパは おウチが事務所なので、
会社へ出掛ける訳でなし、
そうゆうのに きっちり合わせる必要はあんまりなくて。
日によってはお寝坊だってするし、
仕事場のお部屋でも、
助手の人は一応ちゃんとしてるけど、
パパは時々、
お散歩に行くときみたいな普段着で机に向かってるものね。
だけども、お客さんと他所で会うとか、
相談されたの観に行くときとかは、
やっぱりスーツを着てくから、

 『そういえば、今日って
  ○○さんのところへ、
  懸案書をお届けするとか言ってなかった?』

ママが目玉焼きを セナへ“はい”と渡してくれながら、
先に食べてたパパに訊いたらば、

 『暑いのはごめんだなぁ。』

パパはそんな風に
“うんざりだなぁ”って言い方をしてた。
時計の代わりについてたテレビ、
お天気を受け持ってるおねいさんが、
ひらひらした日傘をさしてて。
今日は ずんと紫外線がつよいですよ、
暑くなるからお水も取りましょうねとゆってたから、
それを聞いてての一言だったみたい。




 「だよなぁ。
  まだ梅雨前だってのに、
  何で毎年毎年 はやばやと暑いかな。」


駆け回るのがお仕事な子供たちは、
早々と普段着には半袖が定番と化しており。
セナのお友達のヒル魔くんなぞ、
クロップドパンツ風の七分丈パンツはセナと同じだが、
大人みたいに半袖の麻のシャツの下に、
ランニングタイプのタンクトップを重ね着なんていう、
ずんと お洒落さんないで立ちをしているくらい。
もっと暑くなってから
オーバーシャツと合わせることはセナだってあるけど、
冷房よけとか陽焼けよけの上着代わりじゃなくて、
カラフルなのを意識して重ねてるところは
いかにもお洒落のためって着方だし。
軽やかな金髪に色白で愛らしいお顔、
しゅっと引き締ってしなやかな四肢という、
一端のモデルばりな風貌には、
むしろそのくらいは考慮しないと
あまりに釣り合わないほどかも知れぬ。

 『そういうセナ坊だって、
  いつも可愛いの着てるじゃねぇの。』

今から既に、
力みの強い目許が鋭角的な印象の妖一くんとは正反対、
赤ちゃんみたいに ふわふかな頬と黒みの多い大きな眸を
“はにゃ〜vv”と甘くほころばせて微笑うのが人気の、
それは愛らしい容姿をしているせいだろう。
玉子色とかアースカラー系の柔らかな色合い、
デザインも女の子との兼用みたいな格好が多くて。
ワイルド・ラフとか尖ってるとかいう形容詞とは無縁な、
丸襟のブラウスとか淡色のオーバーオールとか、
ケープつきのコートとかいうガーリーなアイテムを、
しかもそりゃあ可愛ゆく着こなすものだから。
この二人が
いろいろ着込む冬場なんぞに並んで立っていたりすると、

 『…北風と太陽、ってか。』
 『雪の女王と春の女神とか。』

何の意図も他意も無く、
ついついそんな感慨が洩れるほどに、
尖りようとかクールとファニーっぷりとか、
何かといろいろ凄んごく対照的だったりするそうだが。(笑)

 「その前に、何で女王と女神なんだよ

そりゃあ、まだちょっと雄々しいって要素が足りないからでは。
…って、わっ、そんな恐ろしい銃を構えるのは無し無しっ!

 「……およ?」

話をずんと元へ戻せば、
今日も今日とて、陽の照りようもお元気なまま、
陽向にいると肌がひりつくようなそれが続いてて。
正午に向けて気温はぐんぐんと上昇中、
まだお昼までという曜日もあるセナやヨウイチくんは、
そんな中をとぽとぽと帰らにゃならぬのが
却って大変だと言いたいらしく。

 「まあな、
  帰っちまえば
  涼の取りようもあろうって配慮なんだろうが。」

俺なんかこれから賊大のグラウンドだぞ、馬鹿野郎と。
舌打ちするその小さなお背(おせな)には、
スタイリッシュなデザインのデイバッグを
ランドセルの代用のように背負っておいでの坊やだが、
そのバッグの中には、
実は…坊や自信も考案スタッフに名を連ねる、
先進の降霧装置へのアイテムが忍ばせてあって。

 「霧のって、あの、
  駅とか大きい商店街とか公園とかにある、
  もくもくってスモークが出る機械だよね?」

 「そうだぞ。よく知ってたな。」

王城のグランドにもつけよっかって、
いつだったかコーチの人がゆってたもん、と。
さすがはブルジョア校ならではな順番で、
そちらは採用が検討されているらしかったが、
こちらさんのは既製品ではないがため、
開発途上のものだからという建前の下に、
随分と融通が利かせられ、

 “太陽光で電力補充するタイプので、
  一番変換効率の高いのを装備させてあっからな。”

少しくらい曇天でも大丈夫という
アメフトというスポーツの特性に添わせたタイプに
仕様も効率も考慮されてある辺りも完璧に。
広々と開放された場所だからこそ
日陰のないグラウンドへの酷暑対策、
今からその算段とやらも練っておいでの、
相変わらずに抜かりのない軍曹殿だったりもするワケで。

 「何だったら、王城へも回してやっても良いんだぜ?」
 「う〜〜〜。」

でもなぁ、ヒル魔くんの発明だと、
何かこっそり仕掛けがついてそうだしなぁなんて。
そちらさんも さすがに慣れて来ておいでのセナくんが、
ひょこりと小首を傾げた傍らを、
黄色いアゲハが ひよひよふわふわ、
まろぶように飛んでいた、
初夏の昼下がりの一幕でございます。





   〜Fine〜  14.05.14.


  *幾らなんでも
   そろそろ毛布は仕舞った方が良いのでしょうか。
   梅雨に入っても しばらくは夏日が続いてなかったですかね。
   そして、そろそろ七月とかいう頃に、
   雷雨や豪雨になったんじゃあなかったか。
   とりあえず、こちらの軍曹閣下は
   夏への対策に着手なさっておいでのようでございます。(苦笑)


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